知りたいことは、なんでもかんたんに知ることができるようになりました。
ふと疑問がわいた時に、
「こうすればいいのですよ」
と、パッと導いてくれるコンテンツやサービスがいくらでもあり、困った時にはすぐに助けてもらえる安心感をわたしたちは手にしています。
インターネットは、コンピューターが作ってくれるネットワーク。
人と人とをつなげてくれる、すばらしい文明の利器です。
ただ、「カンタンで」「わかりやすい」情報ほど支持され、拡散していくようになったことで、混乱や悩み、不安をよけいに増やしてしまった分野もあります。
筆頭が、性やセックスでしょう。
ことに、女性の性。
本来、女性の性や肉体について「カンタンで」「わかりやすく」「正確に」答えることは、どんな人にもできません。
事実、あなたもそうではないでしょうか。
カンタンでわかりやすい説明にポンとあてはまるような、わかりやすいセクシャリティをもった女性……では、ありませんよね。
それも当然。
最も「カンタンで」「わかりやすい」情報とは、映像や絵、写真といった視覚情報です。
次に、視覚に近い言葉です。
頭の中で、パッと映像がイメージしやすい言葉や、すぐに行動で試せる言葉ですね。
けれども、女性の性が、いかに心と深く結びついたスピリチュアルなものかを、視覚的に一瞬で見せてあげることはできませんし、そうしたわかりやすい言葉も存在しません。
もちろん、女性たちは「愛」「しあわせ」「やさしさ」「安心感」という、いちばん近い言葉で、ブレずに発信しているのですが、男性には「??」となってしまいます。
性やセックスとは別世界の話をしているのだろうと、頭を切り替えてしまうのです。
一章でも少しふれたように、男性の陰世界への入り口は、射精の快楽だからですね。
性器摩擦で起きる快楽を、女性も同じように得られるにちがいないと思いこんでいるふしがあります
(やっぱりな…)
(男の人って自分本位だもの…)
(もう期待したくない)
いえいえ、そうがっかりしないでいきましょう。
本来の男性は、「女性をよろこばせること」に生きがいを感じる、とても頼もしい騎士。
これも、男性の性のOSに組み込まれている不変のしくみです。
現状、そうは思えない女性もいらっしゃるかもしれないのですが、これまで、男性が率いる陽の世界でも、ずいぶんとこじれたことが起きていたようなのです。
あなたが目にしたことがあるかどうかわかりませんが、性やセックスに関する膨大な情報は、現実社会という陽の世界を大河のように太く広く流れています。
その成分の大半は、アダルト情報といわれる、映像、画像、あるいは男性が女性を性的対象としてのみフォーカスした、男性目線の文章情報です。
このいずれでも、女性はただの性的快楽の対象物であるか、あるいは、目に見えてわかりやすく快楽におぼれる心とからだの持ち主として表現されています。
それらのほとんどは、男性たちの夢と願望が生みだした妄想の産物です。
ごく一部が、男女のむつみ合いの最高の瞬間だけを切り取った、ちょっとかたよったリアリズム描写です。
古い例では、浮世絵がそうですね。
男性器を挿入されてあえぐ女性の姿……江戸文化のひとつとして、世界的にも評価されています。
現代では、AVが代表的。
日本発のアダルトビデオは、インターネットの普及で世界中に拡散して、日本をまるでセックス天国のように印象づけているようです。
クリエイト作品として、だれかが評価しているかぎり、頭から否定するべきではないと思ってはいますが、一方で、現実のわたしたちの性生活はどうでしょう。
セックスレスや草食男子、腐女子、恋愛ベタ、夫嫌い、ED男性の急増。
もちろん、性に嫌悪感を抱く女性や、一度も性的快楽を得たことのない女性たち……とてもセックス天国どころではありませんね。
元々は、こうした男性目線の性情報は、男性たちがあこがれの女性をうっとり夢見るための娯楽でした。
浮世絵やAVのように、性的快楽におぼれる女性の姿というのは、どんな男性でもいつかは果たしたいと願う、理想図です。
それも「女性をよろこばせたい」本能の欲求が描く理想です。
女性が「キレイ」や「美」「おしゃれ」に目がないのと、ほぼ同じなのです。
なんのために?といったら、本来は、どちらも異性に愛されたいがためでした。
でも、女性が「キレイ」や「美」を手にいれるほうが、いくらか分がいいかもしれません。
先ほどお話ししたように、女性の性をにぎる心やホルモンというのは、目に見えないため、男性がカンタンにわかりやすく理解できるものではないからです。
古来より、獲物を見つけるなど、地図もない山々や原野を縦横無尽に走りまわる役割を担ってきた男性にとって、視覚情報は一も二もなく真っ先に求める「理解」の手がかりです。
つまり、視覚ですべてを理解、判断しようとする性質があるのですね。
そのため、性情報も、元々は夢見るための娯楽だったものが、経済社会の進化に伴ってどんどん発展してしまい、「教材」としてひとり歩きするようになりました。
参考にされ、「女性はこうだ」と信じ込まれて、多くの男性が女性の扱いをすっかりまちがえるようになってしまったのです。
正すには、いったんシンプルに立ち返ったほうが、楽で平和な気がします。
男性は陽。
女性を守り、よろこばせたい本能の持ち主。
女性は陰。
守られ、よろこばせてもらうことで男性に生命力を与える存在です。
前章でお伝えした、母性本能を男性に発揮することがいかに障害かも、さらにうなずけるのではないでしょうか。
そして、どんな時代であっても、陽の世界がどんなに進化し移り変わっても、陰の世界は人が人から生まれてくるかぎり、永遠になにも変わらない、愛と幸福を体感する世界です。
