愛し愛されること。
それは、大きなひとつの夢のかたまりのように感じますね。
でも、冷静に見ると、まるで裏と表のふたつの夢が重なりあっています。
愛することと、愛されること。
両方のバランスが取れると心とからだは安定し、やわらかみのある自然な女性性が、香るように開いていきます。
でも、どちらの比重が大きすぎても、心が苦しくなったり、からだに不調が起きてしまうのです。
女性は陽である現実世界で、周囲の人に対して多くの「愛」を使っています。
それは、心とからだにあらかじめ、母性という「痛みがまんソフト」がインストールされているから。
このソフトの取り扱いを知らないままだと、愛し愛されることのバランスが崩れて、心がこわれたシーソーのように激しいアップダウンをくりかえすことが多々あります。
まじめでがんばりやの女性ほど、陰、つまり性世界で、ここちのいい快楽という「愛」を補充することがとても大切なのです。
母性については諸説ありますが、ここでは女性の性のもつれをほどく手だてとして、ごくシンプルにひもといていきます。
過去にさかのぼっていきましょう。
仕事をもつ。家庭をもつ。子どもをもつ。
どんな大人になっても、いくつになっても、男性であれ女性であれ、心の奥には幼いままの自分がいます。
日々の暮らしではめったに思い出されませんが、現実の裏側である性の世界に、いつでもかならずいるのが、なつかしいその子です。
心の奥底で、ひとりぼっちで泣いている少女。
7歳頃のあなたです。
目に見えてからだが変化する、思春期の性の目覚めよりも数年早く、目に見えない女性性が芽生える年齢です。
かわいそうに、なぜ少女のあなたは泣いているのでしょうか。
「さみしい」からです。
「もっと愛されたい」から。
だれに?
「お母さん」に、です。
自分の性と向きあえない、あるいはセックスにコンプレックスを抱く女性は、大半がこの時期の母娘関係のひずみから、そのタネを生じさせています。
お母さんは、どんな存在だったでしょうか。
やさしくて、たのしくて、あったかくて、おもしろくて?
「大好き」を通りこして、思い浮かべるだけでドキドキしたかもしれません。
いつも忙しそうで、近よりにくかったかもしれません。
目の前で見た泣き顔にショックを受けたかもしれないし、イライラと怒鳴られてばかりいたり……?
いずれ、どんなお母さんであっても、少女のあなたはお母さんを心から深く愛していました。
それは、それまでのような、「もっとお母さんに愛されたい」というむじゃきな欲求を抑えつけるもの。
そう、母性の芽生えです。もっとも身近な人である、お母さんに対して、ソフトが試運転を始めたのです。
飛びついて甘えたい。
もっと話を聞いてほしい。
もっと抱っこされたい。そばにいてほしい。
でも、がまんしました。
困らせたくない。
お母さんがかわいそう。
助けてあげたい。
少しでも役に立って、よろこばせたい。
幼いあなたは、一生懸命にお母さんを「守っていた」のです。
