きもちのいい秋晴れの土曜日。
朝起きたら、夜中に訪ねてきたらしいきみがリビングで寝ていて、びっくりした。
部屋いっぱいに、小春日和の陽ざしがさしこんでいるのも気づかないで、
二日酔いなのか、午後になってもまだぐうぐう寝ているきみを、
(…早く起きなさい!ボーイスカウトの時間だよ)
と、たたき起こしたくなりました。
きみは覚えているだろうか、近くの林の木もれ陽の下で、しょっちゅう日帰りキャンプをしたこと。
あれは、少年のきみを女手だけで育てちゃいけない気がして、
週末だけのレンタルお父さんをしたのでした。
力もちで、器用で、なんでも一生けんめい教えてくれる、やさしくかっこいいお父さんたちがたくさんいたね。
仲間の子たちと野山をかけまわったり、はんごうでごはんを炊いたり、自然を学んだり、
目をかがやかせて、夢中で楽しむきみを見ていることが、
あの頃の母さんのいちばんのよろこびでした。
忘れないようにね。忘れないようにね。
きみがなりたいだろうかっこいいおとなになるなんて、かんたんだよ。
きみが大切だと思うことをだれかに伝えればいいの。
それはいったいどこでやれるのかを、真剣に探すのよ。
がっかりするな。がっかりすることに、早く慣れなさい。
目覚めなさい、目覚めなさい。
きみの力を借りたい人が、どこかにかならずいるよ。
