クリトリス海綿体は、好きな人と心から愛しあうために、オーガズムの悦びがあふれる幸せな関係を築くために、もっとも重大な役割を果たす器官です。
下のようなイラストには、あなたもなじみがあるかもしれません。
女性の外性器
女性器の上方にちょっぴり顔を出しているのが、一般的にクリトリスと呼ばれている部分です。
女性が最も感じる箇所として知られていますが、正式には、陰核亀頭(いんかくきとう)と言い、大きなクリトリス海綿体の、ほんの先っぽです。
男性器でいう亀頭に該当し、かなり敏感な、デリケートな部分です。
たとえば、男性のオナニーでさえ、自分の亀頭を直接ごしごしこするようなことは、まずしません。
陰茎部分(亀頭の下から根元)の包皮で亀頭を守りながら、全体摩擦をするスタイルが一般的です。
それくらい、海綿体って過敏(かびん)な組織なんですね。
それでも、男性は刺激を加える機会が多いので、亀頭もまだ丈夫です。
男性たちは、ほうっておいても精子がじゃんじゃん作られてしまい、射精しなくてはならないので、日常的にオナニーをするせいで、敏感な亀頭とはいえ、多少は刺激に慣れています。
ですが、女性には射精のメカニズムはありません。
海綿体が自然勃起する機会が、男性とは比較(ひかく)にならないほど少ないので、女性の場合はオナニーも日常的ではなく、刺激に対しては、さらに過敏です。
もちろん、海綿体は敏感で気持ちがいいからこそ、脳内麻薬様物質をたくさん分泌させやすいのです。
そういう意味では、男女ともに快楽を感じるためにある組織ですが、別の見方をすると、この海綿体は、何かから守るために発達した組織でもあります。
男性の場合は、日常的な排尿(はいにょう)や射精に耐えられるよう、管(くだ)をスポンジでくるんでいるんですね。
では、女性の場合は?
基本的には、クリトリス海綿体は、男性器挿入の痛みから守るために備(そな)わっています。
ちょっともう一度、女性の内性器を見てみましょう。
ピンクのクリトリス海綿体が、尿道(にょうどう)ごと膣をしっかりホールドして、守っていますね。
女性にとって、男性器の挿入は、痛みからスタートします。
初めてのセックスは、快感どころではなく痛いものですし、絶頂感を伴(ともな)うほど陰部神経が稼働(かどう)するには、やはりクリトリス海綿体が、〈良い情報〉を脳にどんどん伝達して、しっかり充血していることが大前提です。
充血していればセックスの痛みは薄れ、しだいに気持ち良くなります。
クリトリス海綿体を、より充血させられた男性にセックスチャンスをたくさん与えるという、女体のしくみですね。
比率的に、男性器と変わらないほど、大きく膨張するクリトリス海綿体。
快楽面だけで言うなら、あなたの身体の中に、男性器が一本入っているのとほとんど同義です。
たっぷりと血液が送り込まれて、上のイラストのように勃起すれば、強く大きな快楽を生んでくれます。
ですが、男性器とちがって体内にあるため、直接刺激することはできませんね。
そのかわりに、女性はオキシトシンをたくさん分泌させて子宮を動かし、フェレクションが起きるよう、からだが無意識に望みます。
もっと見つめられたい。
もっと長く抱きあっていたい。
長くやわらかなキスでとろけたい。
彼の熱い体温で全身くまなく包みこまれたい。
これらはすべて、現実にオキシトシンをみるみる分泌させるために必要な行為であると同時に、女性が恋愛やセックスの陰世界に夢見ること、そのものですね。
クリトリス海綿体の平常時からフェレクションまで、最低でも40分の全身愛撫やスキンシップが必要だといわれていますが、それができる男性に出会えたら、女性は理性ではなく、本能でこう思うことでしょう。
(彼はわたしを攻撃したり、孤独や危険にさらす人じゃない)
(わたしを守ってくれる、安全で信頼できる人だ)
こうして、言葉にならない安心感と信頼が芽ばえ、ふくれあがります。
そして、女性側にも相手男性の心とからだを守ろうとする、情動(心の動き)が起きます。
おたがいに陰世界で愛を補充し、力を得て、陽世界でも強く支えあえる純愛関係へとつながっていくのです。
男子も女子も、海綿体は〈守り〉の組織。
生殖器は、とても重要な組織だから、
すみずみまで計算されて精巧にできてるよ。
人のからだってすごいねー。