母性が芽生える7歳頃の心の動きは、のちのあなたの恋愛や性行動に大きな影響を与える、女性性の原体験です。
自分の欲求を抑え、がまんすることでお母さんを「守っていた」少女のあなたは、それによってお母さんを喜ばせることを覚えます。
お母さんは、まさか幼いあなたが「母性で自分を守ろうとしている」とは、夢にも思いません。
ランドセルさえ大きすぎてひっくり返りそうな小さな娘の、「心の成長」という受け止め方をします。
言われなくても自分から進んで手助けをした時。
役に立ちそうなことを思いつき、実行した時。
遊びたいのをがまんして、勉強や習いごとをがんばった時。
兄弟姉妹になにかをゆずる、あるいはめんどうを見てあげた時。
お母さんから、こんなふうに褒められたのではないでしょうか。
(ものわかりのいい)
「いい子ね!」
(気のきく)
「やさしい子ね!」
(がんばりやの)
「おりこうな子ね!」
(自分を殺せる)
「いいお姉ちゃんね、助かっちゃうわ」
ものわかりのいい子。
気のきくいい子。
がんばりやのいい子。
自分を殺せるいい子。
こうしたメッセージとしてあなたは受け止め、もっとそうなろうと努力し始めました。
この努力は、もちろん悪いばかりではありません。
ただ、現実世界において有益な、実を結びやすい努力だということです。
つまり、社会性。陽の部分です。
母性の芽生えという性的成長を、社会性の成長としてのみ評価されてしまっていることに盲点があります。
そのために、お母さんは「このまま成長してくれますように」と期待を寄せていきます。
少女のあなたは、本当は「愛し愛され」たくてやっていたことでした。
お母さんがそれに気づいていたら、きっとこう言ってくれたはずなのです。
(ものわかりがいいのは甘えたいのね)
「お母さんも、お返しにあなたのしてほしいことをなんでもしてあげる。なにしてほしいかな?」
(気がきくのはふりむいてほしいのね)
「一緒にお絵かきしようか!」
(がんばりやなのは認めてほしいのね)
「でもね、もしもできなくても、あなたがとっても大切よ」
(自分を殺せるのはわたしのためね)
「おいで、抱っこしてあげる!」
こんなふうに言われたら、どんなにうれしかったでしょう。
お母さんを困らせないよう、悲しませないよう、一生懸命守っていることをわかってもらえたのですから。
「愛したら、愛された!」
そう、これが女性としての最初の成功体験。
愛と幸せが溢れて、力がみなぎり、決してがまんではない自然な女性性へと、性の道を歩き出します。
しなくていいことも選りわけられるようになり、母性という「痛みがまんソフト」の使い方も身に着くのです。
大人になって、恋愛やセックスといった性の世界で自分を抑えつけることなく、のびのびと女性性を開放できる人は、女性としての誇りや幸せな性の気配を、お母さんから受け取っています。
褒めて育てるという育児法はとても大切ですが、女の子には、母性本能という自己犠牲性を高めないような褒め方をしないと、のちのち自己肯定がしにくくなる、あるいは、お母さんに対する恨みのような感情に苦しむことになります。
家庭環境により人それぞれですが、深刻であれ軽度であれ、これは、多くの女性の陰世界にはだかる、かなり大きな岩です。
人知れず長らく抱えることになる、つらい無意識の苦しみです。
