あなたが初めて愛し、あなたを初めて傷つけたお母さん。
少女期のトラウマというほど深刻じゃなくても、この悲しみの原液に、すべての女性が一度は染まっています。
出産を前提に作られている女性の心とからだには、母性という「痛みがまんソフト」が組み込まれていて、7歳頃から稼働するため。
お母さんを母性で守ろうとし、自分の欲求をがまんして耐えたという原体験です。
大人になっても引きずるお母さんへの複雑な感情は、ある程度は自分でコントロールすることができますし、多くの女性がそうしよう、お母さんを許そうと、理性的な努力をします。
なぜかというと、お母さんを嫌ったままでは幸せになれないと、これも本能的に直感しているからです。
そもそものお話をすると、幼い頃、あなたに孤独を味わわせた「痛みがまんソフト」は、性のOSに組み込まれた母性という本能のひとつ。
本能は、人を苦しめるためには絶対に存在しません。
食べること、眠ることと同じく、より幸福とやすらぎを味わうためのしくみであり、生物の基本型「攻め」と「守り」でいえば、個体を守るための欲求です。
では、母性本能に限っては、なぜ少女のあなたに孤独を味わわせたのでしょうか?
答えは、「性の道へ向かわせるため」です。
男性とふれあい、肌のぬくもりでからだを包みこまれることで得られる、お母さんがくれなかった肯定感や安心感を、あなたに与えるためなのです。
つまり、
(もっと愛されたい)
(お母さんでは無理、違うだれかを見つけよう)
と、あなたが行動するよう、最初からしくまれていたこと。
事実、性の世界には、母への失望や不満をきれいに払拭できる、大きな「成功」があります。
お母さんを許すのではなく、
(ああ、わたしを生んでくれてありがとう…!)
そう実感すること。
これは、許すことのように意識的に努力をしたり、ネガティブな感情を消そう消そうと自分に言い聞かせる、いわゆるマインドコントロールとは、少し違います。
あなた自身の心とからだから、自然にわきあがり、あふれる洪水のような感動であり、感激です。
結婚や出産といった晴れやかな時だけでなく、セックスによる深い性的快楽を得た時にも、このメンタル革命が起きます。
性の悦びは、あなたが不安、悩みや自己否定の苦しみから解放され、愛を実感して生まれてきたしあわせを味わうためにあるのです。
心はあやふやなもので、どっしりとしたいかりでつながれていないと、吹く風のままに北へ南へ流されやすいのですが、そのいかり役をするのが、肉体です。
肉体は、陽の世界のあらゆる情報を脳に届け、なにが不快でなにが悦びなのかを取捨選択して、喜怒哀楽や思い出、願望といったあなたの心を作り出します。
陰の世界は、この脳内の情報収集作業場のようなものですから、陽の世界で心にひずみが起きた時、陽の世界で解決しようとするよりもたやすく、陰の世界で正すことができます。
本来は、陽世界という現実生活での心の負荷を取り去り、バランス調整をするために、性という陰世界が存在するのですね。
性は人とのふれあいで始まり、ふれあいで終わります。
「やさしく抱きくるんでくれる人肌のぬくもり」は、あなたの記憶の奥底で泣いている孤独な少女をやさしく泣きやませ、深い安心感で救ってあげる、たったひとつの手段です。
心の疲れや重荷を取りのぞく、やすらぎの愛です。
そして、すべての女性が知ることのできる最高の性の快楽の、第一歩でもあります。
愛する人と、身も心もひとつにとけあうセックス。
すてきですね。
女性が一度ならず抱く夢ですが、それもそのはず。
「めざしなさい、そこへ向かいなさい、可能です」という、本能のメッセージだからです。
女性の性には母性本能がかならず関わってくるために、彼を思いやりすぎて、自分だけが傷つくようなことは、避けたいもの。
あなたの心の中の純粋な少女を、あの頃のお母さんのように冷たく突き放さないであげてください。
気がついて。気がついて。
ずっとひとりぼっちで泣いているわたしに。
もっと愛されたい。
しあわせになりたい。
幼い頃に満たしそこねてしまった「肌のぬくもりでからだ中を包みこまれる安心感と肯定感」への欲求を、いつでも胸に秘め、抱き続けていきましょう。
その本質と目的をつい忘れてしまうと、北へ南へ、相手の思惑や情報に流されやすくなります。
それはそれで否定はしませんが、ただ、これでいいのか疑念がわいたり、楽しいよりは苦しい、虚しいと感じてきたら、それは新たな旅立ちへのサインです。
あなたの旅なのですから、景色が色あせ、息苦しくなってまでそこに居続ける必要は……ありませんよね。
