オキシトシンは、あなたが女性なら、心とからだへの影響がかなり強い体内物質のひとつです。
もちろん、男性にとっても大変重要で、働きと効果は同じです。
ただ、男性は、陰である女性とは正反対の、陽の性質を持っていることを、コスミックフォース(陰陽法則)は教えていましたね。
陰陽で示されたこの男女性差のしくみは、人の不老長寿をめざす東洋医学の柱でもあり、数千年に渡り最重要視されてきました。
それが近年の医学的研究努力により、二つの生化学物質の働きで説明がつき始めようとしています。
(スウェーデン農科大学 シャスティン・ウヴネース・モベリ博士調べ)
女性は、女性器を持っていることで、オキシトシンが活発に働きます。
対する男性は、男性器を持っていることで、バソプレシンという、オキシトシンとは正反対の役割をする体内物質の働きが、優勢になりやすいのです。
バソプレシンは、闘争や縄張り設定のために交感神経を活性化させたり、血圧や心拍数を上げるなど、興奮、攻撃、警戒型の身体機能を司ります。
つまり、狩りや闘いに対応する心とからだのしくみが、バソプレシンによって作られています。
このバソプレシンも、理解を深めたい物質ですが、女性を主軸にした本書では、オキシトシンの対比対象として、適宜に説明を加えていきますね。
では、女性が男性を惹きつけるという、オキシトシンの奇妙な働きにフォーカスしてみましょう。
人は二足歩行で骨盤がせまいことに加えて、赤ちゃんも大きな脳を持っているため、他の動物に比べて、未熟な状態で出生します。
脳がしっかり育つまでお腹の中にいると、頭が大きすぎて出てこられませんし、母体生命が維持できなくなるためです。
危機管理や食など、生まれた赤ちゃんの脳やからだに、最低限の自立した生存能力が発達するまで、どんなに早くても生後二年です。
妊娠から数えて丸三年は、母体である女性は、赤ちゃんのために心身を提供するのが、わたしたち人間の性のしくみです。
この間、行動の自由が利かない女性は、食料調達や巣である住居の守備を、赤ちゃんの父親に一任します。
一組の男女が力を合わせて子を守るという一夫一婦の原型は、文化というより生殖システムだったわけですね。
そして、注目したいのは、この時のオキシトシンの働きです。
うんと原始の、文明文化がほとんどなく、言語も確立していなかっただろう時代であっても、夫役である男性が、まさに命がけで妻子を守ったからこそ、人はこの地球上で繁殖することができました。
すてきな美談ですね。
でも、どこか出来すぎている気もしませんか?
そんな社会的ルールもなければ、他の女性に目移りもするでしょうし、そもそもお腹の子の父親が、自分であるかどうかもわからないのです。
妊娠した女性を見捨てることもたやすいですし、養育の任務を果たす必要は、ないといえばなかったのに、なぜ原始の男性たちは、そうした自分にとって楽な行動を取らなかったのでしょう。
答えは、男性が自分と赤ちゃんをちゃんと庇護するよう、女性側が無意識下のオキシトシン分泌で操っていたからです。
人は生物界で唯一、発情期のない動物で、生殖以外でセックスをする理由も、ここにあります。
基本的には、女性の豊かなオキシトシン分泌が男性をやすらぎで誘惑し、愛で酔わせてつなぎとめます。
つまり、媚薬ですね。
見つめあい、ふれあい、抱きあい、性交することで、男性側のオキシトシン分泌も促されるようになります。
オキシトシンは、やすらぎと幸福感をもたらす、いってみれば、〈善良な愛の麻薬〉の働きをします。
そのため、その女性は手放せない大切な存在として男性の脳に焼きつき、継続した愛と絆の感情を維持するようになります。
男性のオキシトシン司令は女性を愛して守り、女性のオキシトシン司令は子どもを愛して守るという図式ですね。
また、闘いや死の危険と隣り合わせの日常を送る男性は、バソプレシンという闘争のためのホルモン/神経伝達物質が活発に作用します。
そのため、常に警戒心が強く働き、攻撃性が無意識に表面化します。
理性でいちいち考えていたら、あっという間に外敵にやられてしまいますからね。
強い男であるよう、自分のからだという内側からも、プレッシャーをかけられているわけです。
また、男性が日常的に行う射精は、ドーパミンという神経伝達物質の発生を伴います。
ドーパミンは、強い快楽を脳に送ると同時に、神経や心臓、血圧への負担が大きく、生殖年齢以降に、この負担のツケが回ってきます。
東洋医学では、中年期を過ぎると、男性の方が成人病や内臓疾患、うつ病にかかりやすいのはこのためだと、三千年も前から考えられてきました。
でも、大切な女性との、やすらぎに満ちたセックス習慣があれば、男性の疲弊した神経細胞もバランスを取り戻し、健康を維持することができます。
また、オキシトシン分泌の機会を得ることで、やたらめっぽうな無茶をしない自制力も身に着き、延命につながったのでしょう。
バソプレシン、オキシトシンは、基本的には生殖、子孫繁栄のために機能しています。
そのため、意識や理性を司る言語脳(大脳皮質)ではなく、原始脳(脳幹)と、感情を作る辺縁系のあいだにある、視床下部というところから分泌します。
つまり、バソプレシン、オキシトシンどちらも、無意識の領域で分泌し、心(情動)を生みだすという点が、要注目なのです。
脳の機能レベルの概要図
なぜ人には発情期がないのか。
なぜ人は性から逃れられないのか…とくに男性たち。
答えは、自発的にオキシトシンを分泌しづらいから。
それは心もからだも苦しいことなのです。
苦しさから解放されて、愛と幸福を感じるためには、オキシトシンが必要です。
もしもあなたが、男女関係に失望するばかりで、男性不信になりそうだったら……。
それは、どちらが悪いということよりも、単に男女性差のせいだった可能性も高いのです。
少なくとも、そう考えてみたら、心の古傷がすっと消えて、女性であることの誇りを取り戻せるかもしれませんよ。
男性はバソプレシン優勢。
女性はオキシトシン優勢。
これが男女心理の特徴のモト。
どちらも意識じゃなく、無意識で働いちゃうんだよねー。
ワザとやってるんじゃないってこと。
ここ大事!
