親が子を愛し、守るように。
男女の違いなく、人が性の幸福を実感するのは、人のぬくもりや温かみに包まれ、身も心も外界から守られている時です。
おたがいに、幼児期以前のオキシトシン・プレジャー(脳の内分泌細胞物質・オキシトシン分泌時の恍惚感と快楽)を、無意識に求めていたことがわかります。
その延長線上に、大きな性の快楽が待ちかまえています。
性情報はどこまでいっても情報でしかなく、現実にぬくもりを実感することはできませんし、
(性ってこういうものなんだな)
と思いこんでしまうと、女性のからだのしくみに添わないことが多々あります。
その象徴的な事実が、セックスでオーガズムを感じたことがないという、女性たちの不安や劣等感ではないでしょうか。
加藤鷹さんという有名なAV男優さんが、こんなふうに言っています。
「イッたことがないという女性が7割。イッたと思っている女性が3割。その3割の中でも9割はイッたと思いこんでいる。残りの1割が本当にイッたことのある女性」
これでは何度愛しあったつもりでいても、孤独を感じて当然といえば当然なのです。
優しい肌のぬくもりを交わさない性器結合がセックスであり、それは卑猥で背徳的な行為だという常識に染まっているかぎり、出口のないこの状態は続いてしまうでしょう。
これまでお話してきたオキシトシンホルモンが全身にまわるオーガズムが起きず、真の性愛の境地にたどり着けないからです。
性的快楽の発生回路にも種類があり、
「生まれてきてよかった…!」
と感極まって涙があふれる性の悦びをめざすあなたには、避けてほしい障害物もあります。
興奮するための商品やプレイ、ことに手軽な快楽をあっせんするアダルトグッズは、女性向けであっても「女性性を捨てて男性に従属するための道具」です。
つまり、男性の後追いですね。
女性の性のしくみが広域で考慮されていないため、知らず知らずとはいえ、結果的にはふたりを性の幸福から遠ざける原因になりますので、どうぞご注意を。
単純に、陽世界で「人が作った性的なもの」は、迷路をぐるぐる回る小さなワナだと思っておけば大丈夫です。
自分のからだ。彼のからだ。
ふたつの完成された自然に敬意と誇りを抱いて、「身も心もひとつにとけあいたい」という純粋な気持ちでいれば、なにがワナでなにが幸福につながるかは、知性で見分けることができるでしょう。
陰の旅は、いつ、どこから始めても自由だからこそ、性における愛としあわせが「ふれあい」でもたらされるという事実は、ぜひあなたの味方につけておいてくださいね。
人の五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)のうち、女性が発達しているのは「嗅覚」そして「触覚」です。
肌はふだんから、暑い、寒い、冷たい、痛いといった外部情報を繊細にキャッチして、あなたのからだを守りつつ、より豊かな感受性を育てています。
通気性の悪いポリエステルよりは、なめらかで官能的なシルクの肌ざわりに魅了されたり……。
好きな香りのボディローションで、肌をケアする時間が楽しみだったり……。
水道水ではない、天然温泉のやわらかな水あたりに心から癒される……。
こうしたやすらぎが女性性を育むのは、女性の肌が脳に直結している「ハートセンサー」だから。
この肌という「ハートセンサー」こそ、陰の世界でも視覚以上に愛としあわせへとあなたを導く、たしかなアンテナになります。
これまで何度か書いてきた、
「あなたの心とからだの声がすべて」
というのも、「嗅覚」と「触覚」のすぐれたアンテナ機能を意味しています。
陰の旅は、心地よければいつまでも続けられますし、オキシトシン・プレジャーの優美な快楽に恵まれる機会も雪だるま式に増えていきます。
食材ひとつひとつの匂い。
花の匂い。ハーブの匂い。
好きな人のからだから漂う、言葉以上におしゃべりな匂いのメッセージ。
自然に対する嗅覚を磨きましょう。
そして、自分の肌を大切にいたわり、人肌のあたたかさを求め続けて「ハートセンサー」の精度を高めましょう。
そのためにも、前述の避けたほうがいい障害物を、具体例として記しておきますね。
◎視覚系障害物(ポルノグラフィ、AV、官能漫画等)
→バソブレシンを放出させ、オキシトシン分泌が抑制される。
→男性的な攻撃型興奮をもたらすため、無駄に欲求不満状態になりやすい。
◎妄想系障害物(官能小説、BL小説、性体験記等)
→自己体験のような記憶のすり替えが起きやすい。
→現実のセックス中に思い出し、妄想で興奮する脳回路が優先される。
→「肌のハートセンサー」の働きをストップさせ、オキシトシン分泌も抑制される。
→相手を尊重しない自慰型セックスになりやすく、一体感を得られない。
◎物質系障害物(ローター、バイブレーター、ローション等アダルトグッズ)
→電気振動は、オーガズムレベルが低いまま神経系絶頂を誘発する。
→神経麻痺が起き、自然な愛撫に反応しにくくなり、常用の道へ至りやすくなる。
→オーガズムレベルの向上が望めなくなる。
→内性器(クリトリス海綿体・骨盤底筋群・子宮頚部・子宮等)の能力向上が望めない。
→ローションは使い切りしないと細菌繁殖しやすく、また、膣の自浄作用(愛液分泌能力)を低下させる。
最近はセクシャリティを全肯定する「なんでもアリ」が流行っていることを思うと、これはもうほとんど全否定になりそうですね。
でも、これは嫌われても言うしかありません。
わたし個人は好かれることより事実をお伝えするのが仕事で、そこにはメッセンジャーとしてのあなたへの責任があります。
あなたの性のしくみは、他人のアイデアでいじりまわさなくても、すでに完璧に仕上がっています。
わざわざ興奮するための材料を使って興奮しなければならない理由もないし、劣等感という心理的な穴を埋めるための快楽は、つかんだと思うとすぐに消え、行き詰まるのも早いでしょう。
手の届くだれかを自分の力で愛したいのでなければ、その性の形は陽の世界で作られた「経済活動」にしかなりえません。
セックス産業を必要とする人もいますし、アダルト情報で救われる人もいます。
それぞれの産業に携わっている人たちが悪事を働いているわけでもありませんし、むしろ、個々の役割に対し責任を果たしている隣人です。
一生懸命に生きていない人はどこにもいないのですね。
だから、あなたにとって重要なのは、本当にあなたに必要なのかどうか。
のどの渇きを海水でうるおすようなことにはならないか。
さみしさ、悲しみを忘れたい、人知れず押しこめたいという理由なら、障害物には手をつけないことをおすすめします。
性という大きな本能の前では、理性は思う以上に頼りないもの。
恋愛やセックスの陰世界は、陽世界とのバランスを取り、心身をしあわせで満たすためにあります。
そこでは、愛しいだれかの熱い肌に触れ、自分と同じ「生きた生命」だと深く深く感じる以外に、あなたがするべきことはなにもないのです。
からだ中のすべてが、勝手に、ドラマチックに動き始めます。
